小学生の頃の話。飼い犬の散歩をしていた。公園の水飲み場で、犬に水を飲ませてあげていると、お婆さんがやってきた。犬を連れている。ニコニコしながら、もごもご喋っている。
「あらあら、お友達がいるわよ。もごもごちゃん。もっもごしましょうね」
なにを喋っているのかハッキリとは聞き取れないが、うちの犬と仲良くさせたいらしい雰囲気だ。相手の犬が寄ってくる。うちの犬も特に敵意を見せず、顔を合わせる。そして流れるように、相手の犬はうちの犬の後ろに回りこみ、両前足をうちの犬の背中に乗せた。
「うん?」という顔をしたは、うちの犬だったか、ぼくだったか。おかしなことになってることに気づいたうちの犬は身を翻し、抗議の鳴き声を上げた。
「あらあら!男の子だったの!?」
ババアが驚いた素振りを見せた。ぼくは犬を連れ、その場を逃げ出した。
「もごもごちゃん。もっもごしましょうね」の「もっもごしましょうね」は「セックスしましょうね」と言っていたんだと思う。
あのババアは近所のメス犬を見つけては、さっきの様に飼い犬をけしかけていたのか。なんておそろしいことをするんだ。うちの犬がメスだったらと思うとゾッとする。
そんな思い出。