三途の川おさかなのブログ

だらだらしている

殺す

何ヶ月か前に、おさかなの住むアパートの隣人は死んでいるなんて言って、その理由に隣人宅の入り口に大きなクモがでーんと巣を構えて何週間も経つというようなことを書きました。ええ、ええ、そのあと、隣人はちゃんと生きていたという話はしました。今日はその大グモの話なのです。

いつぞやの台風で、大グモは巣ごとぶっ飛ばされちまっていたみたいで、通過するのが怖かった隣人宅の前は何にも無かったかのようにすっきりしておりました。そんなわけで、大グモのことなんかおさかなの記憶からはすっぽりと抜け落ちていました。

おさかなはアパートの2階にある部屋に住んでいます。夕方、1階にあるアパート住人共用の洗濯機に、洗濯物を運ぶ為、隅にある階段を目指して歩いたとき、ふたたびやつの姿を拝むことになりました。元々巣があった場所からは10メートルほど離れたところに、大グモがまた新たな巣を拵えておりましたのです。結構高い位置にあったためか、今日まで気づかなかったのですけれど、徐々に拡大して、おさかなの視界にも巣が映るようになったのですね。クモ自体もなんかパワーアップしたような印象を受けました。

このまんま巣を放っておくと、そのうち、歩いていたら顔面にくもの巣がもしゃっとはりついてしまう日がやってくる。クモ自体もなんか危なっかしいので、悪いけど、殺すことにしました。

部屋から殺虫スプレーを持ってきて、大グモにぷしゅうと噴霧します。5秒ぐらい続けて当てたのですけれど、余り効果は無いようです。そのうち殺虫スプレーの霧が届かない高さにわさわさと上っていってしまいました。

そこで、今度は部屋からチラシを縦長に硬く丸めた物を持ってきました。これで巣を壊して、そのまま大グモも叩き潰すのです。しかし、あれ、ふと巣を見上げると大グモの姿が見えません。

視線を前に戻し、大グモが壁にでも貼りついているのかと伺っていると、ふと頭上1メートルくらいから、カサりと小さな音が聞こえました。一瞬どきりとして、2、3歩後ずさりました。

その瞬間、急降下してきた大グモがおさかなの目の前十数センチのところを横切って、おさかなのお腹の辺りの高さでみよよーんと空中に止まりました。よく見れば、大グモから1本の糸が上に向かって伸びています。大グモもおさかなを敵と判断し、一矢報いようとしたのでしょう。空中でぶらぶらと間抜けに振舞っているようで、何か、大グモからはただならぬ殺気を感じ、緊張してきました。

おさかなは大グモに向かって、殺虫スプレーを大量に吹きかけました。しかし、やはりあまり効果は得られない。そこで、丸めたチラシを大グモ目掛けて力いっぱい振り下ろしました。パシりと確かな手ごたえを感じ、視線を落とすと、半分潰れた大グモが、体液を地面に滲み出させていました。念のため、もう一発、丸めたチラシでばしんと叩きました。

さっき、2、3歩後ずさりしてなかったらどうなっていたのか。ほんの十数秒前のことを振り返り、ぞわぞわと怖くなって、しばらくぼーぜんと立ち尽くしてしまいました。蚊やゴキブリを潰したりするときはなんとも思わないくせに、なんだかみょ~な罪悪感さえ込み上げてくる始末なのです。しばらく大グモの怨念を背負うことになりそうです。

そういえば、朝にクモを殺してはいけないなどという迷信があったと思います。ネットで調べてみると、クモに関する迷信っていっぱいあるみたいなのです。前述の朝に…は詳しくは朝クモは殺してはいけない、夜クモは殺せみたいなのです。でも所によっては夜クモは殺してはいけないもあるみたいです。とりあえずクモは縁起と深く関係があるみたいなのですね。クモからしてみると、お前ら生き物の命をなんだと思ってんだばっきゃろー。

おさかなは猫は殺せません。犬も殺せません。鳥も殺せません。トカゲも殺せません。蚊は殺します。ゴキブリも殺します。ハエも殺します。クモも殺します。でもカブトムシは殺せません。クワガタムシも殺せません。なんだかなー。