うーん、さわやかな朝だ。今期の木曜日は1限目を入れていないので、朝のバイトが終わったおさかなは無意味に大学キャンパスのベンチに着きました。目の前には整備された緑色の芝生が広がり、3階建ての校舎に負けない位伸びた木が元気に数本立っています。ちょっと冷たい風とぽかぽか温かい太陽が良いあんばいです。
バイト先でいただいた、賞味期限切れのおにぎりをほおばっていると、楽団の後輩であるおっちゃんが左側からぬうっと現れました。
「おふぇよぅんごぞいます」
おさかなはおにぎりが口に入ったまんま挨拶しました。
「おはようございます」
挨拶が済むと、おっちゃんはおさかなの左側後方のベンチに着きました。楽団事情によると、おっちゃんは最近、王子とも呼ばれてるみたいです。おっちゃんと王子じゃすごい差だ。
1限目の始まる時間まで、あと20分ぐらいあるので、おっちゃんもこのさわやかな朝をベンチで満喫するようです。
しばらくすると、ふたたびおっちゃんが左側からぬうっと姿を現しました。そしておもむろに右手をおさかなの目の前に差し出します。手にはリポビタンDらしきものが…。
「見て下さい。リポビタンGですよ」
口の中のおにぎりを吹き出しそうになってしまいました。コンビニで新種を発見して、つい買ったらしいのです。気持ちはよくわかりますけどね。商品の発表を終えると、彼はまた定位置に着きました。
これから飲むのかな?と、ちらりと彼を見るとペットボトルのコーヒーっぽいものを飲もうとしてました。なんだリポGは飲まないのか。
しばらくすると、みたびおっちゃんが左側からぬうっと姿を現しました。手にはまたリポGが握られています。わざわざおさかなの目の前で飲もうというのです。彼はリポGをぐびりと一口飲むと、味はリポDの方が断然良いという感想を述べました。…と、その瞬間、リポGを持つ彼の右手上腕にしゅばっととんぼが貼り付きました。しかも2匹連なっております。おわあっとびっくりして、おっちゃんがとんぼを払いのけます。リポGの効能解説には効果はすぐに現れ長く続くとあるそうなのです。こいつはモーレツな効き目のようだと2人でびっくりしてました。
おさかなも少しだけ飲ませてもらったのですけれど、おかげで後に口にしたおにぎりが変な味になってしまった。なんてことを!
